2013年06月27日
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三百字小説『雨リカちゃん』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 雨リカちゃんは、アメリカから来た雨女だった。

 だから、いつも濡れていた。傘を持っていてもいなくても雨は降るからだ。

 それは不便だ。ぜひとも雨女は返上したかったので、雲の上で雨を降らせる鬼に会いに行った。

 ちょっとイケメンの鬼は言った。

 「それはダメだ。雨を降らせるタイミングは神さまが決めていておいらには左右できないからだ」

 そして、雨リカちゃんは雨に降られることがなくなった。なぜかって? 雨を降らす雲の上の鬼と結婚してそこに住んだからだ。雨雲の上に住んでいれば雨に打たれることは無い。でも、いつも足の下の天気は雨だった。

(遠野秋彦・作 ©2013 TOHNO, Akihiko)

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